緊急座談会 ~我が国デジタル化の今後について~(2/5)

2.今後のデジタル社会の全体最適化に向けた視点

【仙波】最近の報道で、行政届け出書類の押印廃止について、法務大臣が婚姻届けや離婚届もその対象として考えているといった発言をされていてかなり驚きました。言うまでもなく、婚姻届や離婚届は戸籍簿に記載される極めて重要な情報源であって、押印を廃止する上では、それに代わる確実な確認手段を講じた上でないと、法務省は認めないと思ったからです。もちろんデジタル技術の進展で、押印そのものに対する信頼性は薄らいでおり、形式的な手続きになっていることはその通りなのですが。

【森田】デジタル化が進んでいるエストニアでも、絶対対面でないとその役所が承認しないのが婚姻届と離婚届と不動産の売買です。つまり、直接対面して、担当者が本人の意思を確認するには、単に言葉だけではなく、その顔つきや態度も含めてきちっとチェックをするということが必要だって言うのですよね。ところが、日本の場合にはハンコをなくすと言っていますが、事実上婚姻届は代理でもいいわけだし、三文判が押してさえあれば、本当の本人の意思かどうかまでは分からないですよね。
  そういう意味では、本来の届出制度の目的に対して日本はものすごく甘くていい加減な制度で、 それに加えてハンコという余計なことまでしていたのではないかと思います。もしハンコをなくしても良いですよと、それがサインにするか署名にするかということはあると思いますけれど、それは手続き的にはやった方が良いのかもしれませんが、実際の婚姻の意思の確認であるとか、そういうことを確認する制度としてはあまり意味がない。これをデジタル化してデジタル署名にしたら同じようにだめではないか。そういう意味では、その制度の本質を見て何が一番合理的であるか、そしてその合理的である制度を達成するためのツールとしてデジタルがどう使えるかと、そういう発想が必要になってくるのではないかと思います。だから、日本の場合には目的と手段っていうか、その一面だけ見てデジタルにすればいいんでしょうみたいなところが多すぎるのではないでしょうか。

【安達】報じられている政府のデジタル化対応を見ていると、マイナポイントの導入や健康保険証や運転免許証との一体化など、マイナンバーカードの普及をデジタル社会の一丁目一番地のように力を入れているように感じますが。

【森田】たしかに、今の政府はマイナンバーカードの普及に力を入れていますが、エストニアなどではもうカードはだんだんすたれてくるだろうという認識です。要するに本人認証の手段ですから、健康状態から労働関係から年金から私に関するデータベースと私本人とをつなぐ一種の鍵としてカードがあるわけで、あくまで本人確認手段であって、カードの中にデータがあるわけではない。私が本人ですよということが分かり、それを使ってデータを入れたり出したりするツールのため、別にカードでなくても良いわけです。すでに向こうはスマホのSIMカード 1 などにシフトしています。
 スウェーデンなどは、マイクロチップを体に埋め込んだら楽で良いと言っているし、中国の深圳の地下鉄では手ぶらで行って顔認証で入場できている。最初の1回目だけ顔認証してどこの誰だかをスマホに登録しておくと、あとは顔パスで乗れるわけです。
 韓国の新幹線も、ネットでチケットを買えば、あとは何の障害もなく入っていけるわけですよね。電車が動き出してから車掌が見て、お金を払ってない席に人がいた時にチェックされる。ですから何百万円もする自動改札機などは不要なのですね。日本では一人でもキセルがでると絶対良くないという考えのようですが(笑)。

【安達】デンマークを訪れた際に、有料道路を走る車のナンバープレートを撮影して、後から車の持ち主に請求するという仕組みがあると聞きました。それでは取りっぱぐれもあるでしょうと聞いたら、それはあるかも知れないが、そのために大金掛けてゲートなどを設けようとは思わないと言われました。

【森田】そう思います。だから、今の三密対策で、感染を予防するために人出を抑制すると言いますけど、台湾なんかはマイナンバーの下一桁が奇数か偶数かで、外出規制をかけるとかですね。1/3にしようと思えば3で割って余りが0か1か2かでやればできるわけですし(笑)、多分そんなやり方をした方が合理的でしょうね。だから、自動車の混雑を防ぐために、ナンバープレートが奇数か偶数かで分けるということもいろんな国で見られます。そうした方がはるかに安全でうまくいく。ただ、それをどこでチェックするかというところで、日本の場合は特定個人情報2の話が出てくるものだから困ってしまう。


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